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2023.05.07Live/Event

Concept LIVE 2023 Fantôme Iris in Wonderland オフィシャルライブレポート

 2023年5月3日、ボーイズバンドプロジェクト「from ARGONAVIS」が、EX THEATER ROPPONGIにて「Concept LIVE 2023 Fantôme Iris in Wonderland」を開催した。本ライブはプロジェクトに登場するヴィジュアル系バンド・Fantôme Irisによるワンマンライブで、バンドの単独公演としては2022年5月以来 となる。また、コロナ禍から活動を開始していた彼らにとって初めての“声出しアリ”のライブだ。本公演は眷属(Fantôme Irisファンの愛称)はもちろん、演奏するメンバーたちにとっても心から待ち望んでいたものだ。

 薄明かりの中に5人が登場すると、客席からは早くも大きな歓声が上がった。宴の始まりを知らせる鐘の音が響き、一瞬の静寂が訪れる。厳かに始まった1曲目は「Janus」だ。ステージが明るくなると、いつもは黒を貴重とした衣装の彼らが、雰囲気の異なる装いをしていることに気づく。“不思議の国を思わせる世界観に合わせ、ボーカルのFELIX(演:ランズベリー・アーサー)はマッドハッター、ギターのLIGHT は白うさぎ、同じくギターのZACKはチェシャ猫、ベースのHARUはハートの女王、ドラムのDはハートの騎士のモチーフの服を纏っている。もうひとつ特筆すべきは、演奏隊がこれまでのライブでつけていたマスクが外されていたことだろう。細部までこだわって作られた特別な衣装と相まって、眷属たちは耳だけでなく目も釘付けにされたはずだ。こうして見ていると、眷属が手にしたペンライトやリングライトの灯りもロウソクのように目に映り、世界観の完成に一役買っているようだ。FELIXが「溜め込んできたその想い、心のままに叫べ!」と告げ、ヘヴィなサウンドで聴く者を熱狂させる「ザクロ」、ベースラインが際立つ「狂気のメロディ」と流れていく。

 ここで一息入れ、FELIXが「ようこそ、不思議の国へ」と、しばし言葉を続ける。旅の途中、あらゆる幻想に満ちた不思議の国に迷い込んでしまった彼らは、居心地の良さにしばらく暇をもらうことにしたという。そして、今夜の5人は“肩書き”も普段とは異なるものだった。あらためて紹介すると、LIGHTは「時を知らせる白き従者」、ZACKは「狂喜の笑みを浮かべる獰猛な獣」、HARUは「苛烈なハートの女王」、Dは「赤と白の騎士」、そしてFELIXは「不思議の国をも染め上げる吸血鬼の王」である。FELIXはようやく眷属たちの声が聴ける日が来たことを喜ぶと、客席からもメンバーの名前を呼ぶ声や歓声でいっぱいとなった。これは誰もが待ち望んでいた、そしてこれから先もずっと続いてほしいと願わずにはいられない光景だ。

 憂いを秘めたストリングスの旋律が響く「miroir」、運命と絆の始まりを歌う「影と光」、オルゴールの音色が印象的な「un:Mizeria」と、どこかメランコリックな楽曲が続き、激しいだけでなく、美しさに心をぎゅっと掴まれるような音で観客を魅了する。
ステージが暗転すると、楽器を下ろしたZACKがステージ中央にティーテーブルを運んできた。レースのテーブルクロスで戯れる様は、チェシャ猫の衣装と相まってキュートな雰囲気だ。するとそこに、マカロンを乗せた皿を手にしたLIGHTが現れた。そしてジェスチャーでZACKに「食べては駄目」と念を押し、優雅な手付きで紅茶を淹れる。過去にはLIGHTがFELIXに“ワイン”(を模した飲み物)を運ぶやりとりがあったものの、メンバーたちによるこうした寸劇が見られるのは初めてのことだ。眷属たちは2人を微笑ましく見守りつつ、拍手を送った。
 マッドハッターらしく帽子を被ったFELIXがステージに再登場すると、美しい仕草で紅茶を一口。「さあ、お茶会を始めよう」と言葉を投げかけ、「棺の中のセラヴィ」へ。これはまさにシチュエーションにピッタリの選曲といえる。そして次に届けられたのは「聖少女領域」! 元曲はいわゆる“ヴィジュアル系”というくくりではないものの、Fantôme Irisらしいアレンジが施され、彼らの世界観との親和性に驚き納得した人も多かったことだろう。そんな驚きもつかの間、続けて聞こえてきたのは時計の針が刻む音とダークなイントロ。披露されたのは「DRINK IT DOWN」のカバーで、これまた「そう来たか……!」と唸らされた。こちらのアレンジもFantôme Irisに実にしっくりくるサウンドながら、彼らの新たな魅力も存分に発揮されている。

 しばしの静寂ののち、FELIXが「お茶会は楽しんでもらえたかな? ここからは自由時間だ」と告げ、歓声を煽る。HARU、LIGHT、ZACK、そしてDが客席に向けて存在をアピールすると、FELIXが“僕の自慢の仲間はどうだい?”とでも言うように誇らしげな表情を見せた。演奏隊も一緒になって力強い掛け声をコールアンドレスポンスし、曲は「Into the Flame」へ。疾走感溢れるリズムで客席を熱狂させると、カバー曲「BLACK JACK」を投下。今夜は特別な意向のライブとはいえ、すべてのカバー曲が初披露とは誰が予想しただろうか。メンバーもハイテンションでリズムに乗り、眷属たちを酔わせた。

 続けて演奏された「XX in Wonderland」は、まさにこの日の世界観を象徴する一曲で、客席の狂乱も最高潮に。最後にFELIXは「どんな理想も、不可能な願いも我らFantôme Irisが叶えてみせよう」と誓いの言葉を届け、「ラプソディア」を披露。本曲はサビに行くまでに約3分あるほどの壮大な構成で、まるでひとつの芝居のような一曲だ。FELIXはこれを、たしかな演奏に支えられながらドラマティックに“演じ”、歌い上げた。5人はこの上なく耽美で、彼らにしか再現できない空気に会場を染め上げ、本編の幕が降ろされた。

 アンコールに応えて再び舞台に現れたメンバーたちは、エモーショナルな旅立ちの歌「histoire」、LIGHTとZACKのツインギターにブチ上がる「ピエロ」を演奏。FELIXは、不安な日々の中、自分たちの活動に寄り添ってくれた眷属たちに感謝を述べると、メンバーたちも深く頭を下げた。そして「この時を乗り越えた皆と我らならどこまでも進んでいける」と思いを口にし、バンドの初期からの代表曲「銀の百合」を届けてくれた。FELIX、LIGHT、ZACK、HARUが舞台のセンターに揃い、Dがそれを見守る姿。その景色に加え、ようやく眷属も声で応えられるライブが叶ったことは、あまりにも尊いものとして目に写った。

 これで今夜のステージは終了か……と思いきや、ダブルアンコールが実現した。当初は予定されていなかったというこのひとときは、5人はキャラクターではなく素のキャストとして登場、衣装トークなどに花を咲かせた。そして、観客に向けて「みんな、まだ“ヤイヤイ”し足りないんじゃない?」と、「ピエロ」をもう一度披露。眷属も大きな声で会場中が一体となり、妖しくも美しい宴がお開きになった。
一夜限りとはいえ、彼らと眷属にとってずっと待ち望んでいたこのライブは、本当の意味での「Fantôme Irisの夜会」として、ひとつの完成を見せたものだと言っても過言ではない。それはすべての人にとって、宝物のような思い出として心に残ったはず……そう確信できるライブだった。

[取材・文]玉尾たまお

公演概要

公演名:Concept LIVE 2023 Fantôme Iris in Wonderland
日程:2023年5月3日(水・祝)
会場:EX THEATER ROPPONGI
出演:Fantôme Iris
Vo.ランズベリー・アーサー:FELIX、Support Members

セットリスト

01.Janus
02.ザクロ
03.狂喜のメロディ
04. miroir
05.影と光
06. un:Mizeria
07.棺の中のセラヴィ
08. 聖少女領域 (Cover)
09. DRINK IT DOWN(Cover)
10.Into the Flame
11. BLACK JACK(Cover)
12.XX in Wonderland
13.ラプソディア
En1. histoire
En2. ピエロ
En3. 銀の百合
WEn1. ピエロ

国内配信視聴チケット

価格:¥4,400(税込)
受付期間:4月21日(金)12:00~5月9日(火)21:00
配信開始時間:5月3日(水・祝)18:00~
アーカイブ期間:~5月9日(火)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/fantomeiris2023/st/

海外ディレイ配信視聴チケット

※一部歌唱曲がカットになりますので、予めご了承ください。
価格:¥4,400(税込)
受付期間:4月21日(金)12:00~5月16日(火)21:00
配信視聴期間:5月10日(水)0:00~5月16日(火)23:59
受付URL:https://ib.eplus.jp/fantomeiris2023_st

※全て日本時刻になります
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