from ARGONAVIS Official Site
2025.02.06Info
ボーイズバンドプロジェクト「from ARGONAVIS」が、2025年2月2日、日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にて「from ARGONAVIS LIVE 2025 - Chaotic Stage -」を開催した。このライブには、作中に登場するGYROAXIA・Fantôme Iris・εpsilonΦの3つのバンドが出演。2025年は本プロジェクトがこれまで以上に多くのリアルライブを行う一年となるが、その初頭を飾るにふさわしい豪華な内容となった。
この冬一番とも言える寒さに加え、日中は雨もぱらついていた当日。全員の祈りが通じたのか、本番前には雨も上がり、薄い雲に烟る三日月が会場を見下ろす絶妙なタイミングでライブがスタートした。
トップバッターはGYROAXIA。ボーカルの旭 那由多(演:小笠原 仁)が拳を高く掲げて登場すると、観客は待ってましたとばかりに大歓声を上げる。そして「最初から全力でかかってこいよ、日比谷!」の言葉とともに投下されたのは「SCATTER」だ。メンバーの吐く息は白く、照明に照らされたステージの上でもかなりの寒さだとわかる。しかも、リアルバンドとしてのジャイロのライブは2024年4月のワンマン(「GYROAXIA REVIVAL LIVE -IGNITION-」)以来となるにも関わらず、そのブランクをまったく感じさせないどころか、一回りも二回りも成長した演奏で圧倒された。
続く「MANIFESTO」も初期のジャイロの代表曲だ。曲中のフレーズ「King of the world」を観客が一体となってコールし、圧巻の光景が広がる。寒空などおかまいなし、周囲を燃やし尽くさんばかりの熱いサウンドが会場全体を包んでいく。
リーダーでギターの里塚賢汰(演:橋本真一)が、MCで「今年もさらにパワーアップした音楽を届ける」と宣言し、大きな拍手が起きた。続いて、朗らかな笑顔を見せるリズムギターの美園礼音(演:真野拓実)、ふわふわした口調で場を和ませるベース・曙 涼(演:秋谷啓斗)、バンドきっての“色男”ぶりで盛り上げるドラムの界川深幸(演:宮内告典)の挨拶を経て、次の「Freestyle」が演奏される。荒削りなイメージから一歩進み、洗練されたサウンドが“初期ジャイロ”の先へ進んだこと感じさせる楽曲だが、ライブでは音と音がぶつかり合うハードなロックという一面が強調され、内に秘めた闘志が伝わってくる。
続けて、那由多の「全員声聴かせろ!」の言葉を合図に、会場全体が声を合わせた「LIAR」へ。クライマックスに向かってドラマチックに展開していく骨太なグルーヴが、そこにいる全員の体を揺らす。熱くなった空気をさらにかき回すべく、続くはジャイロきっての縦ノリナンバー「GETTING HIGH」。曲が始まった瞬間、ブワッと空気が動くようにボルテージが上がった。全員まとめてハイになったあとは、踊り狂うがごとくのテンションで突っ走る「DANCING PARANOIA」だ。礼音・涼・賢汰の竿隊3人が中央に集結、那由多が「Make some noise!」と客席を煽り、後方の深幸が笑顔でドラムを叩く胸熱の光景が広がり、真冬とは思えぬヒートアップぶりを見せた。凍てつく空気を切り裂く那由多の歌声と、月に向かって吠える賢汰のギターが観る者の心を震わせた。
「どんな暗闇の中でも、その火を絶やすな。聴け――『Unshakeable』」と那由多が告げると、初めて聞く曲名にハッと息を呑む観客。この新曲はほとんどの歌詞が英語で構成された、ジャイロとしては比較的ミドルテンポのパワフルなナンバーだ。“揺るぎない”という意味のタイトルのこの歌は、今のジャイロだからこそ生まれたと言えるかもしれない。そうして全7曲を演奏し終えた那由多は、暑く――いや、「熱くなったかよ」と告げ、アウトロの途中でステージを後にした。演奏を終えた4人が立ち去る姿を見ながら、今日の演奏が「たったの7曲」と感じられてしまうほど、演奏スキルもパフォーマンスも凄まじい進化を見せた“ジャイロの時間”だった。
次に登場したのはεpsilonΦ。彼らがステージに集結するのは、昨年3月のワンマンライブ(「εpsilonΦ LIVE 2024 - Overlord -」)以来だ。5人のメンバーが余裕たっぷりに現れると、ボーカルの宇治川紫夕(演:榊原優希)の「ここからは僕らと遊ぶ時間や」の言葉とともに、「Overlord」でステージがスタートした。
変幻自在のハイトーンボイスで観客を翻弄する紫夕と、全く色合いの違うハスキーな歌声でサウンドを引き締めるもうひとりのボーカルの二条 遥(演:梶原岳人)。εpsilonΦの核ともいえるツインボーカルで、“ここは僕たちの領土”とばかりに旗を突き立ててみせる。極上のハーモニーと複雑な感情を音楽に昇華したかのように渦巻くサウンドは、まさにこのバンドの真骨頂だ。
遥が「もっと盛り上がれんだろ、合わせろ!」と手拍子を煽った「オーバードライブ」は、先述したワンマンライブで初披露したもの。たった1回のみ、しかもまだ配信されていない曲にも関わらず、客席からは喜びの歓声が上がった。この極めて攻撃力の高いダンスチューンでは、演奏隊がスポットライトでフィーチャーされ、あらためて彼ら高い実力に感嘆する。計算され尽くしたはずのサウンドでありながら、スリリング極まりない熱量が生まれ、聴いているこちらの鼓動が早まっていくのを感じた。
3曲目の「re:play」は、アッパーなサウンドの中に復讐という怒りの原動力が込められた楽曲だ。紫夕と遥が交互に歌ったかと思えば、絶妙に重なり合うラップパートに引き込まれる。今日のライブタイトルである「Chaotic(混沌)」という言葉は、彼らにこそ一番似合うのかもしれない。
「赤いおにーさんたち(GYROAXIA)も、黒いおじさんたち(Fantôme Iris)も、腰抜かすようなステージを見せたげる」と笑う紫夕のMCにニヤリとさせられる。一方の遥は、「俺たちの音に負けないくらい、最後まで声出してけよ!」と、真摯に音楽に向き合う彼らしい言葉を届けてくれた。そうして次に披露されたのは、新曲の「S&S」だ。ステージを覆い尽くしてしまうほど大きな渦巻きの視覚効果と、それを彩る極彩色の照明。それはまるで、誰かの心の中を覗きこんだような光景だ。早いリズムとメロディアスな旋律から、「従え!」と畳み掛ける紫夕のボーカルが突き刺さる。テンションを途切れさせず始まった「Cynicaltic Fakestar」では、遥が「まだまだいけるよな? 暴れろ!」と叫び、うねるようなギターが鳴り響く。
やがて遥はステージに膝をつき、内に秘めた何かが爆発したかのように絶叫する。「オルトロス」で感情を絞り出すように「来るな!」と歌う遥の後ろを、双子の弟であるベースの二条 奏が笑いながらついていく。その様子が愉快で仕方ないといった表情の紫夕、そんな彼らを意に介さず正確に演奏を続けるドラムの烏丸玲司とシンセサイザーの鞍馬唯臣。誰かが苦しめば苦しむほど、観客はブチ上がる。なんという歪みだろう。だが、それこそがεpsilonΦなのだ。歌い終えて項垂れる遥の肩に紫夕が手を置き、「ようやった」と呟いたように見えた。
εpsilonΦのターンのラストを飾るのは「光の悪魔」。紫夕の内面をフィーチャーしたこの曲は彼が主人公と言っていいだろう。“極彩色の不協和音”なオルタナティブロックに乗せ、紫夕が絶唱する。全て歌いきった紫夕はこれまでのように崩れ落ちず、両手を広げてしっかりとその場に立っていた。「おおきに」と告げてステージを去る姿を見ながら、この曲も、そのほかのどの曲も、彼らのサウンドはまだまだ形を変えていくだろうと感じた。願わくは、まだまだ聴かせてほしい――そう痛感するステージだった。
合同ライブのラストを飾るのは、ヴィジュアル系バンドのFantôme Irisだ。彼らは旅を続ける吸血鬼の王をはじめとした5人であり、その音楽を愛するファンは眷属と呼ばれている――そんな徹底した世界観でステージを行っている。美しいストリングスの音色をバックに5人が登場すると、やがてパイプオルガンの音が鳴り響き始め、ボーカルのFELIX(演:ランズベリー・アーサー)が「日比谷野音、まだまだいけるだろう!」と観客を煽る。1曲目はスピード感と重厚な音で圧倒する「Brilliant Days」。会場のあちこちでヘドバンの波が起き、一気に狂乱の様相が広がっていく。王の貫禄溢れる麗しい歌声から迫力のデスボまで披露してみせたFELIXが「さあ、夜会を始めよう」と穏やかに微笑み、会場は“ファントムが魅せる世界”にすっかり包まれた。
初期の代表曲「銀の百合」が始まり、紫色の灯りに染まった客席が、月の光に照らされた花畑のように目に映った。ファントムが作った世界観に自ら没入していくギターのLIGHTとZACK、力強い演奏を聴かせる花のように美しいベースのHARU、4人が繰り出す歌と音をしっかりと支え牽引するドラムのD。作中の世界観から少し離れた言い方になってしまうが、4人はサポートメンバーでありながら、それぞれの役どころをこれ以上ないほど見事に演じきっているのもこのプロジェクトのすごいところだ。
早くも会場全体に生まれた一体感、そこへ畳み掛けるように投下されたのは「Into the Flame」。乱れ咲く花々、といったフレーズが頭に浮かぶエネルギッシュなこのナンバーでは、背中合わせになったLIGHTとFELIXに歓声が起きる。
ここまでの空気を一変した3曲を終えて静寂が訪れると、ヴィジュアル系バンドらしくメンバーの名前を呼ぶ声が会場のあちこちから上がる。FELIXが「みんな、元気がいいじゃないか」と微笑み、ワイングラスを片手にメンバー紹介へ。続いてHARUを呼び寄せ、ベース始まりの「狂気のメロディ」でステージ後半がスタートした。曲中では吸血鬼の王FELIXと女王HARUが向き合い、王が女王の顎に手を伸ばす場面も。妖艶なサウンドと相まって、眷属たちも彼らの一挙手一投足に目と耳が釘付けになってしまったようだ。
そして、次に披露されたのは新曲の「Vamserker」。「Vampire」と「Berserker」をかけ合わせたというタイトルの本曲は、毒と狂気を内包した歌詞とサウンドで、これからのライブの新たなブチ上げナンバーになりそうだ。2つの音が絡み合うようなLIGHTとZACKのギターソロも聴きどころの、ファントムの新しい一面を開拓した見事な楽曲だった。勢いもそのままに、暴れ曲「ザクロ」でラストスパートを掛ける5人。吹き上がるスモークが赤く染められ、まるで炎の様相となる。FELIXが「雨 降り止まない」の歌詞を「雨、降り止んだね」と歌い変える演出もさすがだ。
最後に、「今宵にふさわしい曲を」と届けられたのは「下弦の月夜」。ストリングスが響く美しいメロディと、このバンドの優しいイメージを形にしたような一曲だ。リズムを取るのも忘れ、思わず聴き入ってしまう引力。頭上の月は雲に隠れてしまったが、ステージの彼らこそが月のような存在かもしれない。永遠に枯れない花であり、いつもそばで見守ってくれる優しい光のような存在。FELIXは「我らはFantôme Iris。また次の夜会で会おう」と約束し、本編の幕が降りた。
アンコールでは出演者全員がステージに集結し、開口一番「寒いね」と笑い合う。やはりこの日の寒さはステージの上もかなりのものだったようで、汗も引っ込むほどだったという。そんな彼らと観客の、「寒いですか~?」「寒い~!」という前代未聞のコーレスに笑いが起きた。また、今日は3バンドとも新曲を披露したが、GYROAXIAの「Unshakable」は、ボーカルの小笠原によれば「ジャイロとしては初めてくらいの曲で、心情をエモく歌っている」とのこと。εpsilonΦの「S&S」は、榊原曰く「強さと軽やかさの両面がある。『従え!』がこだわりポイントなので、皆さんにも歌ってほしい」とのことで、梶原からは「εpsilonΦ伝家の宝刀、ハモりが多く歌っていて気持ちいい」というコメントがあった。Fantôme Irisの「Vamserker」については、アーサーが「ファントムらしく頭が振れるかなり激し目の曲。次のワンマンライブでも楽しめたら……」と希望をのぞかせた。
そして最後に、「一緒にyai yaiしましょう!」(FELIX)とオールキャスト・4人ボーカルでおくる「ピエロ」が届けられ、すべての演目が終了となった。
コンテンツから飛び出したリアルバンドながら、今ではワンマンライブをこなせるまでに進化した3バンドの夢の共演。蓋を開けてみれば、極寒の真冬だったからこその忘れられない一夜になったような気もしている。各バンドとも、ギュッと詰まった密度の濃さと渾身の演奏で、甲乙つけがたい素晴らしいステージだった。凍りつきそうな空気を吹き飛ばす熱い演奏は、参加した全員の心に残る思い出となったことだろう。
いつか彼らがまたこの舞台に立ち、最高のライブを見せてくれることを願ってやまない。
[取材・文]玉尾たまお
Photographer:西槇太一
価格:¥5,500(税込)
受付期間:~2月8日(土)21:00
配信開始時間:2月2日(日)18:00~
アーカイブ期間:~2月8日(土)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/argo_chaoticstage/st/
価格:¥6,000(税・チャージ込)
受付期間:~2月8日(土)21:00
配信開始時間:2月2日(日)18:00~
アーカイブ期間:~2月8日(土)23:59まで
受付URL:https://ib.eplus.jp/argo_chaoticstage_st
※全て日本時刻になります
※本公演の日本以外の配信対象地域は下記となります
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公演名:from ARGONAVIS LIVE 2025 - Chaotic Stage -
日時:2025年2月2日(日)
開場 17:00 / 開演 18:00
会場:日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
出演:
GYROAXIA
旭 那由多:小笠原 仁、里塚賢汰:橋本真一、美園礼音:真野拓実、曙 涼:秋谷啓斗、界川深幸:宮内告典
Fantôme Iris
FELIX:ランズベリー・アーサー
Support Member Gt.冬真(as LIGHT)、Gt.YOUSAY(as ZACK)、Ba.Sato from ASH DA HERO(as HARU)、Dr.植木建象(as D)
εpsilonΦ
宇治川紫夕:榊原優希、二条 遥:梶原岳人
Support Member Ba.めんま(as 二条 奏)、Syn.翔馬(as 鞍馬唯臣)、Dr.RYOTA(as 烏丸玲司)、Gt.藤井健太郎
01. SCATTER/GYROAXIA
02. MANIFESTO/GYROAXIA
03. Freestyle/GYROAXIA
04. LIAR/GYROAXIA
05. GETTING HIGH/GYROAXIA
06. DANCING PARANOIA/GYROAXIA
07. Unshakeable (新曲)/GYROAXIA
08. Overlord/εpsilonΦ
09. オーバードライブ/εpsilonΦ
10. re:play/εpsilonΦ
11. S&S(新曲) /εpsilonΦ
12. Cynicaltic Fakestar/εpsilonΦ
13. オルトロス/εpsilonΦ
14. 光の悪魔/εpsilonΦ
15. Brilliant Days/Fantôme Iris
16. 銀の百合/Fantôme Iris
17. Into the Flame/Fantôme Iris
18. 狂喜のメロディ/Fantôme Iris
19. Vamserker(新曲) /Fantôme Iris
20. ザクロ/Fantôme Iris
21. 下弦の月夜/Fantôme Iris
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