from ARGONAVIS Official Site
2025.08.07Live/Event
ボーイズバンドプロジェクト「from ARGONAVIS」に登場するバンド・GYROAXIAが、2025年8月2日、TACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)にて「GYROAXIA LIVE 2025 - FANFARE -」を開催した。プロジェクトの初期からリアルライブ活動を支えてきた5人の、“区切り”の公演の模様をレポートする。
2018年から活動を続ける本プロジェクトのストーリー中、圧倒的なカリスマ性と実力を持つバンドとして登場したのが、このGYROAXIAだ。だがその一方、ストーリーを離れた現実世界では、楽器の演奏経験を持つ者はいるものの、バンドとしてステージに立つのが初めてというメンバーが大半を占めていた。それでも彼らはたゆまぬ練習と努力を続け、作中の評価に恥じない実力をつけるとともに、ファンの熱い支持を獲得してきた。心配されていた天候の悪影響も無く、名に恥じないGYROAXIAに、接近していた台風までもが恐れをなして逃げていったかのようだった。
GYROAXIAのイメージカラーである真っ赤な明かりで染まった会場。まだ暗いステージに演奏隊のメンバーが揃うと、ステージ後方の高台の上、逆光の中にシルエットが現れた。それは実力とカリスマ性を備え、バンドの中心であるボーカルの旭 那由多(演:小笠原 仁)だ。那由多はそのまま、アカペラで歌声を響かせる。それから、光と音が爆発するように「GET MYSELF」でステージの幕が開いた。
そこから休み無く「EGOIST」そして「BREAK IT DOWN」が畳み掛けられる。ドラムの界川深幸(演:宮内告典)の刻む骨太なビートと、重低音を自由自在に操ってみせる曙 涼(演:秋谷啓斗)のベース。そこに里塚賢汰(演:橋本真一)の冷静かつテクニカルなギターと、情熱的なエネルギーでギターをかき鳴らす美園礼音(演:真野拓実)の音が重なっていく。さらにその上に、すべての音に負けない那由多のボーカルが加わり、会場全体を焼き尽くしていく。これこそが絶対王者、GYROAXIAのステージだ。
賢汰が「こんばんは。『FANFARE』へようこそ」とあらためて挨拶し、次の準備が出来たか那由多に問いかける。すると那由多は「当然だ。誰に言ってる」と短く答え、観客たちは再び音の渦の中に放り込まれる。那由多の内面を描く歌詞が胸に迫る「Existence」、そこから一気に空気を塗り替える重厚な「NEW ERA」、燃え盛る炎そのものといった「Unshakeable」――GYROAXIAの多彩な音楽性が感じられる3曲だが、印象的だったのがオーディエンスの歌声だ。誰に教えられたでもなく、那由多にマイクを向けられた彼らは一体となって声を上げ、この上ない一体感を作り出していたのだ。
真っ赤に燃え上がった空気を一度クールダウンさせるかのように、ステージがブルーとグリーンの照明に照らし出された。次のナンバーは、この日が初演奏となるミディアムテンポのロック、「深淵のアルゴリズム」だ。歌詞がスクリーンに映し出され、オーディエンスはその言葉の意味をひとつひとつ噛み締めながら音楽に耳を傾ける。この曲の誕生にどのような物語があったのかを知る由はないが、“今”のGYROAXIAだからこそ聴けるものだと言っても間違いではないだろう。
そんなステージから一転、礼音と深幸を始めとしたわちゃわちゃしたMCが観客を笑顔にさせる。それから、賢汰に「次は任せたぞ」と声をかけられた涼は笑顔でそのバトンを受取り、客席を盛り上げる。ここからは、GYROAXIAきってのブチ上がりダンスチューン「GETTING HIGH」そして「DANCING PARANOIA」の2連発で、光と音の渦がとてつもないエネルギーを生み出す。さらには那由多が客席に向かって「もっと寄越せ」と言い、「Breaking the ROCK!!」を投下。狂乱、と形容したくなるようなグルーヴが会場をすっかり包みこんでしまった。
再びステージが暗くなると、宇宙との交信を思わせるような電子音のSEが響き出す。極めてスローなベースのグリッサンドが響き渡り、宇宙船から何も無い暗闇に放り込まれたような心地になる。スタートしたのは「Mother Planets」、これもまた今回が初演奏となるナンバーだ。これまでにない気だるさを感じさせるサウンドは、GYROAXIAの新たな一面を表現してくれた。この曲が作られた背景を知りたいような、知らないままでいたいような不思議な気分だ。
次に、スクリーンにモノクロの映像が流れ始めた。鉛のような曇天、雨に打たれる楽器たちや走馬灯のように振り返るGYROAXIAの物語。次はどんな曲が……と思いきや、披露されたのはフルメンバーによるアコースティックバージョンの「 FAR AWAY」、そして「ALL MY PARTS」だった。決して勢いで押し切るだけでは叶わない、繊細でどこまでも美しいサウンド。これもまた、今のGYROAXIAだからこそ観られる光景だったのは間違いない。おそらくは彼らを見守る観客全員が、その事実に胸を熱くしていたことだろう。
ライブはここからラストスパートへ突入。「REVOLUTION」「IGNITION」と続き、会場は再びヒートアップ。そこからの「SCATTER」イントロでは、メンバーたちがドラムを囲むようにスタンバイした。この時スクリーンに“作中のGYROAXIA”の映像が映されていたのだが、この光景が実に圧巻だった。我々の眼の前に居るのはキャラクターでありリアルであり、その境界線は限りなく曖昧に感じられたからだ。もちろん、過去のどのステージも素晴らしかったのは事実だが、リアルバンドとしての表現が「ついにここまで到達した」「ひとつの完成形を見た」としか言いようのない光景に思えたからだ。
歌い終えた那由多がぽつりと口を開いた。ここまで自分の信じた道を突き進んできた彼は、「立ち止まるな、声を上げ続けろ」と眼の前の観客たちを鼓舞する。そして、彼はこう叫んだ。「このステージを受け取ったお前らにとって、今日という日が呪いになるか、祝福になるか。そういう選択を、俺たちはこれからも投げかけ続ける。それが俺の、俺たちの“MANIFESTO”だ!」――と。その叫びに応えるように、オーディエンスが「King of the world!!」と声を上げる。さらに那由多はアドリブで歌詞を変え「未来を奪いに行こうぜ!」と歌い上げた。那由多一人だけではなく、メンバーとそこにいる全員で共に作り上げた宣言。これは本当に、なんという景色なのだろうか。
本編最後の曲は、ライブタイトルでもある「FANFARE」。不屈の精神と未来への希望を想起させるサウンドに載せて、彼らがここまで歩んできた日々の映像がスクリーンに映し出されていく。演奏が終わり、那由多がマイクを客席に向けると、それに応えてオーディエンスが歌い出す。その歌を聴きながら、那由多を含めた5人は感謝の一礼をし、ステージをあとにした。誰もいないステージには、燃え盛るGYROAXIAのロゴ。いつまでも炎を絶やすなという、彼らからのメッセージにも思えた。
アンコールの「『ジャイロ』コール」に応えて登場したメンバーが投下したのは「LIAR」と「Freestyle」。あまりにもエモすぎる本編のエンディングだったが、感動や涙では終わらせないぞとばかりに、ロックバンドらしい熱さで会場を燃やし尽くしてしまう勢いだ。賢汰が「俺たちはずっとこの景色を忘れない」と言うが、那由多はそれに応えず「最後だぞ、いいのかそんなんで? シケた面してんな、命置いてけ!」「道は続いていくが、今日はここで使い切れ!」と観客を煽り、大きな歓声が上がった。すべての演奏を終えたメンバーたちは、言葉にできない表情を浮かべ、ステージから去っていった。
再びの「『ジャイロ』コール」に応え、ライブTシャツに着替えた5人が再登場。ここからは、活動開始からお馴染みでありファンの楽しみのひとつでもある、役から離れた彼らの“素”の姿でおくるひとときだ(通称、ひらがなの“じゃいろあくしあ”などとも呼ばれている)。5人はバンド活動だけにとどまらず、オフでも遊ぶほど仲が良いとのことで、とても“区切り”のライブとは思えない砕けた雰囲気になっている。そのことを突っ込んだ小笠原に対し、真野が「こんな晴れた日に湿っぽい空気にはさせない!」と言い、客席から歓声と拍手が上がった。プロジェクト休止前の(いったんの)ラストワンマンということで、ふざけたり笑ったりしながらも、どこかこの場を名残惜しむ様子が感じられる5人。MCのラストには、メンバーひとりひとりから挨拶と感謝の言葉が届けられた。
(GYROAXIAは)スタッフさんも含めて本当に仲の良い現場で、ステージに出る前からみんなでわちゃわちゃするのが恒例になってました。このチームがあって、メンバーがいて、そして(観客の)皆さんがいて、こんなGYROAXIAになりました(笑)。バンドでもあり友だちでもあるので、これからも続いていくことでしょう。実はさっきお辞儀した時にうるっと来ちゃったんですが……今日は本当にありがとうございました!
僕はこのプロジェクト、そしてGYROAXIAに出会ってから人生が激変しました。音楽活動をしていた頃に抱えていた夢、叶わなかった夢がここジャイロで叶い始めてきたんですよね。ジャイロやキャラクターと出会い、観客の皆さんと出会ったのは本当に奇跡だなと。今日は積み重ねてきたものを全部ぶつけましたがどうでしたか? 今はGYROAXIAが僕の夢です。これからも面白い景色を見せることができると思うので、それを信じて皆さんとこれからも一緒に歩いていきたいと思います。
プロジェクトは活動休止ですが、僕たちはずっとい続けるし、再開する時まで力を貯めています。まだまだワンマンライブとかもやりたいし、休止している間はぜひ皆さんに支えていてほしいので、ぜひ毎日曲を聴いてください! 僕は実はArgonavisの曲をいっぱい聴いているのですが(笑)、これからも「from ARGONAVIS」を変わらず応援し続けてください。よろしくお願いします!
こうちゃんも話していましたが、GYROAXIAは僕ら5人だけではなくスタッフの皆さん全員でGYROAXIAだというのをライブごとに感じています。僕は普段役者をやっているからこそ、これだけのお客さんが集まることがどれだけすごいことかを身にしみて感じています。メンバーとは長い期間一緒に過ごしてきましたが、自信を持って「親友」だと言えます。この数年間は本当に宝物でした。これからもずっと応援し続けてくだされば嬉しいです。
月並ですが、話したいことは4人が言い切ってくれた感じがあります。絶対また会えるって言いたかったし、今日はどうでしたかって聞きたかったし、スタッフさんの話もしたかったし。ずいぶんと心がひとつにまとまったものだなと、この最後のMCで感じました。今日はいろんな想いを抱えて観てくれた人がいたと思います。ただ、ライブを楽しんでいただいている最中、我々がステージで表現しているキャラクターを皆さんに受け取ってもらっている最中だけは、みんなの両手は僕らがステージから投げかけたものだけになっていてほしいんですよ。それが今日はできたんじゃないかなと思いました。それを僕たちがやるは当然ですが、 この世のすべてのコンテンツやエンターテイメントは、正面から受け取ってくれる皆さんがいないと成立しないんです。これだけだらだらと喋って締めがこれなのはみっともないですが……(頭を深く下げて)ありがとうございました。
そして「FANFARE」ライブの最後は再び、お祭り騒ぎのような熱狂の「MANIFESTO」で締めくくられた。笑顔で演奏を終え、観客全員との記念撮影も終えたメンバーは、いつまでも愛おしそうな眼差しで客席を見つめていた。小笠原が「ステージから降りたくないんだ」と名残惜しみ、橋本が涙を堪えながら笑顔を作った。それから5人は深く深くお辞儀をし、しっかりとお互いに肩を組んで客席に手を振っていた。
リアルバンドとしてのGYROAXIAの初ステージは、2019年12月のことだ。それはプロジェクトの中心バンドであるArgonavisのステージへのサプライズ出演という形で、訪れた観客に鮮烈な印象を残したのだった。そこから時が経ち、当初はカバー楽曲も含めてのステージ構成だったのが、今ではオリジナル楽曲でフルのワンマンライブを行えるまでに成長した。さらに言うと、実はこの日のセットリストやステージングは、メンバー自らが考えたものだったのだという。長い人生からすれば、活動期間はたったの数年と言えるかもしれない。けれどこのライブを通してあらためて感じられたのは、彼らにとってこの年月は何よりも濃く、表現者として大きく成長する日々だったことは間違いないということだ。
この日のステージを見守ったファンには、もっと言えばGYROAXIAを聴くすべての人々の心の中には、消えない炎が残っているはずだ。いつか日常に押し潰されそうになっても、彼らの音楽が心を奮い立たせてくれる。燃える炎を道標に歩き続ければ、きっとまたいつか、彼らに会えるはずだ。
[取材・文]玉尾たまお
Photographer:西槇太一
公演名:GYROAXIA LIVE 2025 - FANFARE -
日時:2025年8月2日(土)
開場 17:00 / 開演 18:00
会場:TACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)
出演:GYROAXIA
旭 那由多:小笠原 仁、里塚賢汰:橋本真一、美園礼音:真野拓実、曙 涼:秋谷啓斗、界川深幸:宮内告典
公演詳細:https://argo-bdp.com/live/post-40804/
M1. GET MYSELF
M2. EGOIST
M3. BREAK IT DOWN
M4. Existence
M5. NEW ERA
M6. Unshakeable
M7. 深淵のアルゴリズム
M8. GETTING HIGH
M9. DANCING PARANOIA
M10. Breaking the ROCK!!
M11. Mother Planets
M12. FAR AWAY Acoustic Ver.
M13. ALL MY PARTS Acoustic Ver.
M14. REVOLUTION
M15. IGNITION
M16. SCATTER
M17. MANIFESTO
M18. FANFARE
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EN2. Freestyle
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