from ARGONAVIS Official Site
2024.03.07Info
2024年3月3日、ボーイズバンドプロジェクト「from ARGONAVIS」が、大宮ソニックシティ 大ホールにて、ライブイベント「εpsilonΦ LIVE 2024 - Overlord -」を開催した。本公演は、プロジェクトに登場するバンド・εpsilonΦによる初のワンマンライブである。
会場は、この日を待ち望んでいたファンで埋め尽くされていた。オープニングのSEに合わせて手拍子が響き、メンバーが至極ゆったりとした歩調で登場する。ついに本番が始まるというポジティブな期待感に、一匙だけ緊張感が注がれたような何とも言えない空気の中――聴こえてきたイントロは「Cynicaltic Fakestar」。ボーカルでありバンドの中心・宇治川紫夕(演:榊原優希)が「弄ばれる覚悟はよろしおすか?」と問いかけ、もう一人のボーカルである二条 遥(演:梶原岳人)とともに歌い始めた。途端に、その声と音が会場を圧倒する。
εpsilonΦは、エレクトロポップやオルタナティブといったジャンルが主体の、まだ中学生の紫夕が率いる年若いバンドだ。だが、スペックだけしか知らずにライブを観る人がいたとしたら、その計算され尽くした楽曲構成や圧倒的な演奏力に衝撃を受けることだろう。だが、彼らの音楽はただハイセンスで格好いいだけではない。1曲目と2曲目の「re:play」は紫夕の“従者”であるドラムの烏丸玲司をフィーチャーした楽曲なのだが、彼の心の奥にある極めて複雑な情念が楽曲のベースであるからこそ、「εpsilonΦだけが表現できるεpsilonΦの音楽」が完成していると言うほかない。
メンバー紹介の後、曲はシンセサイザーの鞍馬唯臣をフィーチャーした「ユメノアト」と「End of reason」へ。キャッチーなメロディ、ダンサブルなサウンドに乗せられたかと思えば、変拍子を効かせたビートに翻弄される。唯臣は礼儀正しく人当たりが良いが、無垢な好奇心で生きた鳥の羽をむしろうとする残酷さも持ち合わせた人物だ。彼らも彼らの奏でる音楽も、好奇心で近づいてしまったが最後、底の見えない深い世界にどっぷり浸かって抜け出せなくなる。
紫夕の笑い声とともに披露されたのは、おもちゃ箱をひっくり返したようにポップで可愛らしいナンバー「Play With You」。けれど歌詞を良く聴けば、攻撃的な言葉が並んでいることに気づかされる、まさに紫夕そのものといった一曲だ。それにしても、εpsilonΦのライブには色とりどりのペンライトの明かりが実によく似合う。そういう意味では、彼らに心酔する観客も含めたこの空間こそが、εpsilonΦの世界のひとつの完成形と言えるのかもしれない。
紫夕に促され、ベースの二条 奏がステージの中央へ。スキップするような足取りで移動しながら指ハートを飛ばし、手拍子を煽る。奏フィーチャーの「Sake it L⓪VE!」は、εpsilonΦにしては珍しくテンション高め。観客も手拍子やコールで参加できる、明るくフレンドリーな奏らしい楽曲だ。だが、次の「I‘m picking glory」は打って変わってダークでダウナーなサウンドが展開され、彼らの振り幅に驚かされる。このバンドのメンバーは全員がどこか屈折し、何かを強く渇望している。奏が求めてやまないのは双子の兄・遥だが、遥は奏の楽曲で歌うことなくステージにも現れず、奏の想いが一方通行であることを表しているかのようだった。
次に、しばらくステージから捌けていた遥が現れ、彼のフィーチャー曲の「Egoistic才Φ」と「Heroic」を投下。複雑なメロディを歌いこなし、楽器隊も確かな演奏力でそれを支えていた。普段は厭世的で無気力な遥には、音楽をこよなく愛し、音楽で自分を認めさせたいという願いがある。「いい眺めじゃねえか! もっと来いよ大宮!」と叫び、珍しくもこの日の彼が時折見せていた笑顔は、ステージこそが自分の居場所である喜びに満ちていたように感じられた。
ライブ後半の展開はさらなる凄みに満ちていた。ここで展開されたのは、奏が綴る遥への想いだ。誰にも渡したくない、もっと絶望してほしい。世界でたったひとりの弟だから、自分だけは最後までそばにいる――そんな、極めて歪んだ愛情の込められた言葉たちは、遥の絶叫を引き出すには十分だった。「オルトロス」は、決して断ち切ることのできない双子という関係性を表現した攻撃性の高い一曲だ。うずくまる遥のすぐ横でベースを弾く奏、二人の姿を紫夕があざ笑う。その光景を目にした観客たちは、一体どんな表情をしていたのだろうか。
そして、観客だけでなくメンバーまでも弄んでいた紫夕を深く掘り下げたのが「光の悪魔」だ。これは初期の看板曲でありながら、彼が誰にも明かさなかった心の中を感じさせるもので、ライブではさらにその色が濃くなる。紫夕はときに絶叫し、ときに笑い声を上げながら、内に秘めた情念を振り絞るように歌った。曲を終えた紫夕はステージの真ん中で項垂れ、あまりにも小さく見える背中を無防備に晒す。どしゃぶりのような音に包まれながら、紫夕は「レゾンデートル」を歌い始めた。この曲は、εpsilonΦとしては最も……いや、唯一の素直でストレートな曲だと言っていいかもしれない。ただの10代の少年が表現する、ありのままの願い。「置いて行かないで」「見放さないで」と涙声が混じるかのようなボーカルに、心を打たれない人はどこにもいなかったはずだ。
本編最後に投下された楽曲は「Overlord」。決して仲良しこよしではない、いつ崩壊してもおかしくないεpsilonΦというバンドが、確固たる意思で突き進む“宣戦布告”だ。紫夕は大きな旗を手にし「すべてを超えて頂点に立つ」と宣言する。この日のライブは、リズムを取ることも忘れてただ見入ってしまう瞬間や、「いま、何を見せられているのだろう」と感じることが何度もあった。どの楽曲にもあまりに深いストーリーと込められたメッセージ性があり、ただの“音”を聴く場ではなく、誰かの心の中を覗いてしまったかのような背徳感があったからだ。その中で堂々と歌われた「Overlord」は、紆余曲折を経て、それでも前に進んでいくことを選んだεpsilonΦの新たなるアンセムになったと感じられた。
アンコール一曲目は、新曲の「オーバードライブ」だ。まだこんな曲を隠し持っていたのか? と、油断していたら真正面から刺されたような衝撃。渦巻くような感情が見え隠れする、εpsilonΦの真骨頂たる刺激的なダンスチューンだ。紫夕と遥の二人の、吐息にもため息にも聴こえるような曲終わりも殺傷力が高い。
そして、ここからはキャラクターではなく“素”のキャストとして送る「from ARGONAVIS」プロジェクト恒例の時間へ。紫夕を演じた榊原と遥を演じた梶原は、お互いに「さっきの歌、格好良かったよ!」などと褒め合いつつ、和気あいあいとしたトークを繰り広げる。二人は最後に、ファンに向けてメッセージを届けてくれた。
こうして、みんな揃ってステージに立つことができて感慨深いです。遥はクールな真人間ながら怒りや反発心を抱えていて、ライブでは特にそれを発散できて気持ちがいいし、演じていて楽しいです。今日もたくさんの方が観てくださって、大きな声で盛り上げてくれて最高です! あと、榊原くんとも仲良くなれて嬉しいです(笑)。
紫夕くんを演じ始めてからけっこう経ちましたが、ほかのバンドのワンマンライブを羨ましいなと思っていました。実際に観てみて「これをやらなきゃいけないのか。ハードルがやばい!」とも感じましたが(笑)、たくさんのパワーをもらえたと思います。ファンの皆さんにも支えられて……ついにワンマンができましたよ! 本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします!
アンコール最後の曲は「Cynicaltic Fakestar」。ここまで、“もう一人の遥”としてサポートギターを務めた藤井健太郎もステージに登場。6人のメンバーで楽曲が届けられ、εpsilonΦ初のワンマンは大成功のうちに幕を下ろした。
[取材・文]玉尾たまお
Photographer:白石達也
公演名:εpsilonΦ LIVE 2024 - Overlord -
出演:εpsilonΦ
榊原優希(宇治川紫夕 役)、梶原岳人(二条 遥 役)
Support Member:Ba.めんま(as 二条 奏)、Syn.翔馬(as 鞍馬唯臣)、Dr.北村 望(as 烏丸玲司)、Gt.藤井健太郎
2024年3月3日(日) 大宮ソニックシティ 大ホール
開演 18:00
01.Cynicaltic Fakestar/εpsilonΦ
02.re:play/εpsilonΦ
03.ユメノアト/εpsilonΦ
04.End of reason/εpsilonΦ
05.Play With You/εpsilonΦ
06.Sake it L⓪VE!/εpsilonΦ
07.I'm picking glory/εpsilonΦ
08.Egoistic才Φ/εpsilonΦ
09.Heroic/εpsilonΦ
10.オルトロス/εpsilonΦ
11.光の悪魔/εpsilonΦ
12.レゾンデートル/εpsilonΦ
13.Overlord/εpsilonΦ
EN1.オーバードライブ/εpsilonΦ
EN2.Cynicaltic Fakestar/εpsilonΦ
価格:¥5,500(税込)
受付期間:2月29日(木)18:00~3月9日(土)21:00
配信開始時間:3月3日(日)18:00~
アーカイブ期間:~3月9日(土)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/epsilonphi2024/st/
価格:¥5,500(税込)
受付期間:2月29日(木)18:00~3月9日(土)21:00
配信開始時間:3月3日(日)18:00~
アーカイブ期間:~3月9日(土)23:59まで
受付URL:https://ib.eplus.jp/epsilonphi2024
※全て日本時刻になります
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